Workday グローバル調査: 財務リーダーがテクノロジー リーダーとなる時代に

Workday の調査により、最高財務責任者 (CFO) は他のエグゼクティブに比べ、ビジネス上の要求に応え続けることに苦労していることが明らかとなりました。それと同時に、CFO は、決断力を持って組織を前進させるには、より信頼性が高く、利用しやすいデータが必要であるという認識を高め始めています。

CFO は、この 2 年にわたり、前例のない課題に直面してきました。著しい経済的混乱の中で会社の安定を保ちながら、ステークホルダーからの数多くの要求を調整し、新たなリスクから会社を守ることを迫られてきたのです。また、それだけに留まらず、相次ぐ規制上の変更や環境、社会、ガバナンス (ESG) に対する新たな要求にも応えなければなりませんでした。

1,150 人のシニア ビジネス エグゼクティブ (うち 295 人が財務リーダー) を対象とした Workday のグローバル調査『Closing the Acceleration Gap: Toward Sustainable Digital Transformation (アクセラレーションのギャップの解消: 持続可能なデジタル トランスフォーメーションに向けて)』により、CFO がビジネス上の要求に応え続けることに最も苦労していることが明らかとなりました。この調査では、財務部門の変革が企業の他部門の変革と比べ、後れを取っていることが示されています。しかし、こうした変革が継続的かつビジネスに不可欠なものとなっている今、CFO は自らの部門に新たなスキルが求められ、決断力を持って組織を前進させる能力が必要であることへの認識を高めつつあります。

財務部門はなぜ、こうしたトランスフォーメーションのギャップに直面しているのでしょうか?また、ギャップを解消するために、CFO はどのようなテクノロジーや投資を優先しているのでしょうか?

今日の CFO がもたらす付加価値

CFO は、組織の変革においてますます重要な役割を果たすようになっています。最高経営責任者 (CEO) は、ビジネスにおける価値創造を推進するために、これまで以上に財務リーダーとの連携を望んでおり、財務リーダーも自身の権限を拡大する必要があることを認識しています。Ally Financial 社で CFO を務める Jennifer LaClair 氏にとって、デジタル トランスフォーメーションとは自社の財務ツールを最新化することでした。

財務リーダーの約 3 分の 1 (34%) は、チームのビジネス上の要求に対応する能力について、ほとんどまたはまったく自信を持っていない、と回答しています。

同氏は次のように話します。「私たちは、会計・財務に関する基本データを見直し、整理し、最新化して、いわゆる『財務データ ハブ』に統合し、その上でデータを活用しています。この新たな財務ツールは非常にアジャイルで、社員にとっても使い勝手がよく、手作業が大幅に削減されました」

LaClair 氏は、より広範な論理的根拠もあると述べています。「今後 24 か月あまりの間で当社のワークフォースは劇的に変化すると思います。新しいツールを導入することで、社員の分析力が大幅に向上し、より迅速にビジネスに対する影響を考慮できるようになります。ゆくゆくは当社の戦略的価値をさらに高めることができるでしょう」

本調査によると、CFO は他の経営幹部と比べ、現時点で自分たちのチームに必要なスキルがないことを最も懸念しています。ビジネスニーズに継続的に応えるために必要なチームのスキルについて尋ねたところ、財務リーダーの 71% が、現在自分のチームに必要なスキルのすべて、または一部が不足していると回答しました。これは最高情報責任者 (CIO) (46%) や最高人事責任者 (CHRO) (59%) よりも高い数字です。

需要に合わせたデジタル インフラの設計

今回のパンデミックを経験した多くの CFO は、主要なビジネス アプリケーションにまたがる正確で利用しやすいデータの重要性を知り、それと同時に自らのビジネス部門にこうしたデータがいかに不足しているかを実感しました。

本調査では、財務リーダーの約 3 分の 1 (34%) が、チームのビジネス上の要求に対応する能力について、ほとんどまたはまったく自信がなく、プランニング、実行、分析サイクルのスピードに自信がある割合はわずか 49% であることが明らかとなりました。テクノロジーが企業価値を高める推進要因としてより顕著になる中、こうした自信の欠如の多くは、データに起因するものと考えられます。多くの組織では、データの質があまりに低く、それらを分析したり、戦略的に活用したりすることに苦労しています。

「CFO の間では、パンデミックから抜け出しつつある中で『現状のままでは前に進めない。変革が必要だ』という意識が高まっているのです」

Pete Schlampp最高戦略責任者Workday

新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) の危機を受け、グローバル ビジネスは、顧客と接する業務のデジタル化に躍起になっています。しかし、多くの CFO は個別のレガシー システムに依存せざるを得ませんでした。そのため、CFO は厳格なプロセスや複数のデータソースの利用を余儀なくされていますが、どちらも迅速な対応が容易ではありません。本調査では、デジタル戦略によってビジネス上の要求に対応できる、あるいは期待以上の成果を達成できると答えた財務リーダーは 31% にすぎませんでした。

成功を左右するデジタル スキル

こうしたデジタル化の後れは、CFO がビジネスを前進させるために、ビジネス全体のデータを民主化し、それらをチームが最大限に活用できるようにする必要があることを示しています。

Ally Financial 社の LaClair 氏はこのように説明しています。「データへのアクセスは、あらゆる企業におけるテクノロジーの問題の核心部分です。データについては企業内のすべての社員が責任を持つ必要があり、Ally 社ではこのようなアプローチを採用しています。全リーダー、そして全社員がテクノロジー リーダーなのです」

ただし、企業がデータを活用してインサイトを導き出そうと考えなければ、データを効果的に活かすことはできません。また、財務リーダーが最も求めているスキルは、新しい収益源を開拓して維持する能力であり、この点を正しく理解することが非常に重要です。

統合医療システムである EE Health のエグゼクティブ バイス プレジデント兼 CFO を務める Denise Chamberlain 氏はこう語ります。「どの取り組みを進めるべきか、どのような影響があるかなどを判断するために、財務分析を迅速に実施することが求められており、 常に戦略的イニシアチブの再評価を行っています。オペレーションとリーダーシップには、これまで以上に迅速な財務分析と情報が必要です」

ポーランドの家電メーカーである MediaMarktSaturn 社の財務担当ゼネラル マネージャの Wojtek Wieronski 氏も、パンデミック時に経験した迅速な分析や情報の入手に関する課題を踏まえ、次のように述べます。「財務部門は、これらの新しいオペレーションや規制がビジネスにとって重要な意味を持ち、どのように対応すべきかを示し、その取り組みを強化する必要がありました。大きな課題の 1 つは、極めて効率的かつ迅速に対応しなければならなかったことです」

Wieronski 氏にとって、会計機能の自動化は、会社のプロセスの合理化と同時に、財務チームがビジネスの進化に伴うニーズに継続的に対応できるようにするための優先事項でした。

調査では、財務リーダーのおよそ 4 分の 1 (24%) が、独立したシステム間でのデータ統合を向上させるテクノロジーやデータのサイロ化を解消するテクノロジーが、プランニング、実行、分析のサイクルを短縮し、財務リーダーの意思決定を向上させるために最も重要であると回答しています。

首席财务官とCIOが連携する時代に

重要なポイントは、この変革により、CFO と CIO の関係が再調整され、財務部門と IT 部門間のより緊密なコラボレーションと継続的なイノベーションが可能となり、両部門のリーダーがより戦略的なイニシアチブに集中できるようになるということです。

現状では、将来のビジネスにおけるデジタル化の重要性について、両部門の見解は異なっています。CIO の 69% が、3 年以内に組織の収益の半分以上をデジタル収益が占めると考えているのに対し、CFO はわずか 27% に留まっています。

ビジネスニーズに継続的に応えるために必要なチームのスキルについて尋ねたところ、財務リーダーの 71% が、現在自分のチームに必要なスキルのすべて、または一部が不足していると回答しました。

しかし両者とも、今後 12 ~ 18 か月の間にデジタル化を拡大していくための大きな機会があるだろう、という考えを持っているようです。両部門の約 3 分の 1 (32%) が、クラウドへの投資の拡大が最大の機会であると回答し、ほぼ同数の回答者が、新しいスキルやチームの獲得と展開の迅速化が最大の機会であると回答しました。CIO と CFO は、共通の戦略的見解を持ち始めているのでしょうか?

デジタル トランスフォーメーションの指針を推進する CFO

Workday の最高戦略責任者 (CSO) である Pete Schlampp は、CFO の変化の速度について楽観視しており、当初 2025 年に予定されていたトランスフォーメーション イニシアチブが前倒しされる可能性があることを示唆しています。

Schlampp は次のように話します。「ファイナンス リーダーは、企業内の他のリーダーと比較すると、変革を進められていません。一般的に、『今から 3 年後には変革し、デジタル化が進む』と言われてきました。 しかし、これらのプロジェクトは盛り返しを見せており、2025 年ではなく、2022 年、2023 年、2024 年を見据えて進められています。CFO の間では、パンデミックから抜け出しつつある中で『現状のままでは前に進めない。変革が必要だ』という意識が高まっているのです」

レポート『Closing the Acceleration Gap: Toward Sustainable Digital Transformation (アクセラレーションのギャップの解消: 持続可能なデジタル トランスフォーメーションに向けて)』の全文をダウンロードして、CFO、CIO、CHRO からの回答をまとめた調査結果をぜひご覧ください。

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