なぜインテリジェントなリソース管理が重要なのか

人財市場のひっ迫と業界からの大きなプレッシャーに直面しているプロフェッショナル サービス企業は、プロジェクトに合わせて人財を選定する従来の方法を見直す必要に迫られています。そこで、インテリジェントなリソース管理がどのように役立つか、Workday の Patrice Cappello と Justin Joseph の見解をぜひご覧ください。

プロジェクトのリソーシングを思いどおりに進められるプロフェッショナル サービス企業はそう多くありません。お客様のプロジェクトにぴったり合うスキルを身につけた人財を選定する必要があるからです。このような人財の選定は長い間、地域レベルで行われており、信頼の置ける同じ人財が何度も採用される傾向が見られます。プロフェッショナル サービス企業では、人財の入れ替わりが比較的激しいにもかかわらず、仕事は成立しているのです。

しかし近年、この業界はまったく違った局面を迎えています。EUの失業率は記録的な低水準に見舞われ、米国では求職者 1 人あたりの求人数が2 件ほどしかなく、人財市場はかつてないほどひっ迫しています。

多くの社員が企業に何を求め、何を期待するかを見直していますが、プロフェッショナル サービス企業では依然としてリモートワーク モデルやハイブリッド ワーク モデルを採用しています。同時に、経済の先行きが不透明な状況が続くことで、顧客の目が厳しくなり、利益率が圧縮されています。また、合併、買収活動の活発化と臨時従業員の活用が進み、広範な人財エコシステムの中から適切なスキルと能力を持つ人財を開拓することがこのうえなく難しくなっています。

一部の企業は現状維持に精一杯で、為す術がありません。一方で、自動化と機械学習を利用して、ワークフォースをリアルタイムに可視化し、プロジェクトのリソーシングを極めて効率的かつ効果的に行い、さらにはインテリジェント化している企業もあります。

Workday のプロフェッショナル サービス業界向け戦略担当グローバル責任者を務める Patrice Cappello はこう話します。「人間による関与を完全に取り除くことはできません。しかし、機械学習をうまく活用できれば、特定のプロジェクトに最適なチームメンバーとなる人財を、さまざまな側面から検討できます。リソーシング担当者が、より迅速かつ正確に自信を持ってデータドリブンな意思決定を行えるようになるのです」

「利益率の低下とお客様のリソース調達の高度化により、企業はリソース管理の見直しを余儀なくされており、この業界では自動化に真摯に取り組むようになっています」

Patrice Cappelloプロフェッショナル サービス業界向け戦略担当グローバル責任者Workday

このようなデータドリブンの意思決定を行うと、収益の面でもメリットを得られます。業界団体Service Performance Insightの調査によると、自動化を導入したプロフェッショナル サービス企業では、社員の請求可能稼働率が 4% 上昇しています。アナリストが指摘しているように、平均請求単価が 1 時間あたり 200 ドルの社員を 100 名抱える企業の場合、稼働率が 4% 上昇すると、請求可能時間が年間 8,000 時間を超え、160 万ドルの収益増となります。

Cappello と Workday のプロフェッショナル サービス業界向け製品戦略担当シニア ディレクターを務める Justin Joseph が対談の中で、インテリジェントなリソース管理 (IRM) による業界の再編、および IRM の価値を最大限に引き出すためにプロフェッショナル サービス企業が取るべき対応について語る様子をご覧ください。

プロフェッショナル サービス業界では、1990 年代後半から自動化が話題に上るようになりました。その後、どのような変化が起き、なぜ企業は今になってインテリジェント テクノロジーを採用しているのでしょうか?

Cappello: これまで、プロフェッショナル サービス企業は、社を挙げて実用的なリソース管理に必要な作業を進めることに及び腰でした。隠れたリソースがあることも、退職者が出ていることも認識していましたが、ほとんどのケースで大きな問題は起きていなかったのです。しかし、ここ数年は、そのアプローチのもろさが浮き彫りになる最悪の状況が続いています。利益率の低下とお客様のリソース調達の高度化により、企業はリソース管理の再考を余儀なくされており、業界では自動化に真摯に取り組むようになっています。

Joseph: リモートワークおよびハイブリッド ワークへの移行も重なり、IRM への注目度が急速に高まっています。新しい働き方が登場したことで、場所や時差にとらわれることなく企業全体でリソースを集め、これまでよりもはるかに簡単にチームを構築できるようになりました。しかし同時に、ワークフォースが本来備えているスキルを多くの企業が明確に把握できていないという課題が浮き彫りになっています。

企業ではスキル分類表を作成しスプレッドシートで管理していることもありますが、これは管理しているとは呼べない状況です。そのため、基本的に自分の知っている人財をプロジェクトに配属させることがほとんどでした。これは、特にリモート環境やハイブリッド環境では、スケーラブルな戦略とは言えません。

IRM とは何でしょうか?また、IRM をインテリジェント化する要素とは何でしょうか?

Joseph: ソフトウェアの観点から言えば、「インテリジェンス」は機械学習とほぼ同義です。Workday Skills Cloudを例に説明しましょう。機械学習を使用すると、履歴書、パフォーマンス レビュー、学習システム、過去に誰かが担当したプロジェクトの種類など、さまざまなソースから情報を抽出し、包括的かつ継続的に更新されるスキル オントロジーを構築できます。このように今現在、習得しているスキルを正確に把握することは、スプレッドシートを使った管理方法ではほとんど不可能です。

全体的なスキルオントロジーの構築は,IRMの機能の一部にすぎません。IRMを活用すれば,場所や言語の好み、特定のお客様に関する戦略的重要性などの顧客関係データを引き出すことができます。営業部門、マーケティング部門、人事部門、および財務部門からの部門横断的なデータを組み合わせて、特定のリソースを配置する際の採算性を微調整したり、パイプラインの前提条件を調整したりすることも可能です。

「機械学習を使用すると、特定のバイアスを排除して業務が公平に分散されるようになるだけでなく、企業全体で適切な人財を適切なプロジェクトで活用できます」

Justin Josephプロフェッショナル サービス業界向け製品戦略担当シニア ディレクターWorkday

このソフトウェアを使えば、あらゆるデータを取得し、特定のプロジェクトにリソースを割り当てるための具体的な推奨事項や、代替モデルを作成できます。つまり、「インテリジェント」なリソース管理とは、実際には、さまざまな側面で適用される機械学習を指すのです。

Cappello: 注目すべきは、組織が大きくなるほど、リソース管理の予測が難しくなることです。機械学習では、あらゆる点を考慮して推奨事項を最適化する際に、多数の手間のかかる作業を処理できます。意思決定を行うのは依然として人であるため、人の関与は避けられませんが、今なら高度なツールで負担を軽減できます。

IRM と、人財の育成と維持にはどのような関係がありますか?

Joseph: プロフェッショナル サービス業界では、同じようなプロジェクトに何度も参加する傾向があります。パートナーやシニア ディレクターがいつも同じ社員を割り当てていると、負担が大きくなったり、キャリアの先細りを感じさせたりするおそれがあります。一方で、新規採用された社員や新しいスキルを持った社員の場合、慣れるまでに時間がかかるという理由だけで見過ごされ、十分に活かしきれないことがあります。つまり、ある人は疲れ果て、ある人は宝の持ち腐れのような状態となり、どちらの社員も自分の成長を感じられません。

機械学習を使用すると、特定のバイアスを排除して業務が公平に分散されるようになるだけでなく、企業全体で適切な人財を適切なプロジェクトで活用できます。また、IRM では、スキル、能力、興味のあるキャリアや目標などのワークフォース データを中心に取り扱うため、社員のスキルを継続的に伸ばし強化するための推奨事項を作成できます。これは、お客様からの要求が高く、成長が二の次になることが多い業界において、真の競争優位性をもたらす可能性があります。

Cappello: プロフェッショナル サービス業界では、人財サプライチェーンが常に重要な役割を果たしてきました。しかし、現在は人財が大幅に不足しているため、企業は減少したワークフォースで増大した仕事に対処するための戦略を積極的に進化させようとしています。そういう意味でも、適切な人財を配置するだけでなく、既存のスキル セットを成長させる方法を見つけることは、間違いなく有利に働きます。

リソース管理の向上を目指す企業が真っ先に焦点を当てるべきポイントは何ですか?

Cappello: いくつか挙げられますが、何よりもデータの正確性が大切です。適切なリソース管理は、ワークフォースに関する正確なデータがなければ成り立ちません。これは、使用するテクノロジーに関係なく、あらゆるシステムの基盤となります。新規採用者をプロジェクトに配属させることを急ぐあまり、オンボーディングを後回しにしたり、スキル データをすべて確認していなかったりするといった声が聞かれますが、こういった対応は避けるべきです。ワークフォース データがなければ、リソース管理は最初からつまずくことになります。

また、ワークフォース全体のスキルをどのように追跡しているか詳細に調べておくことをお勧めします。基本的にスプレッドシートで管理しているがめったに情報が更新されない、あるいはデータが誰かの頭の中にしかないとしたら、問題になることは間違いありません。特に従業員不足の状況においては、企業はどのようなスキルがいつ利用できるかを把握しておく必要があります。リアルタイムの接続されたデータがあれば、自社で抱えるワークフォースを最大限に活用し、新しい機会をより迅速に活かすことができます。

最後に、リソース管理に関して人財配置プロセスを検討する際のポイントをいくつか挙げたいと思います。正式なプロセスや関係者を把握していますか?リソースを十分に確保できていますか?同じ人が何度も同じリソースを活用していませんか?組織全体のビジネスニーズや目標に沿ったプロセスを確立していますか?リモートワークまたはハイブリッド ワークといった新たな変化によって、どのような影響を受けていますか?

Joseph: プロフェッショナル サービス業界では、数年前まで行っていたオペレーションへの関心が薄れています。企業はすでに、プロジェクトへの人財の割り当てを改善し、人財不足を解消し、今後に向けてワークフォースを育てるために、自社の人財に対する理解を深めようとしています。多くの場合、その最善策は、ただ最初の一歩を踏み出すことです。そうすれば、IRM を導入してすぐに得られるメリットにより、インテリジェントなリソース管理への機運が高まります。

Workday がどのようにプロフェッショナル サービス企業のインテリジェントなリソース管理を支援し、デジタル トランスフォーメーションを推進しているかについては、弊社 Web サイトをご覧ください

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